
補修補強会社で施工管理をしているエナガパパです。
今回は2023年のコンクリート診断士試験、記述式(土木)の過去問を丸ごと解説します。
2023年の問題は山間部のPCポストテンション単純T桁橋が舞台です。
- A部の主桁シース内の塩害・凍害複合劣化
- B部の床版下面のASR・シース腐食
という構成で、PC橋特有の「シース内」という視点が加わります。PC橋の問題は一般的なRC橋と少し発想が違います。
「シースの中で何が起きているか」という視点を持てるかどうかが合否を分けます。問題の解き方・使うべきキーワード・回答例まで一気にまとめます。
2026年の試験対策として、PCポストテンション橋のパターンは必ず押さえておいてください。PC橋にまつわる問題は良く出ます。
まず2023年問題の全体像を把握する

問題の設定(問題文の読み取り)
構造物の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 橋梁形式 | PCポストテンション単純T桁橋(PCT桁橋) |
| 竣工年 | 昭和39年(1964年)・供用開始1970年 |
| 供用年数 | 53年経過(2023年時点) |
| 場所 | 中国地方山間部 |
| 適用示方書 | 1961年制定プレストレストコンクリート施工指針 |
| コンクリート強度 | 40 N/mm² |
| 骨材 | アルカリシリカ反応性あり(粗骨材:山砂利、細骨材:山砂) |
| 主桁PC鋼材 | φ24mm(シース内) |
| 横桁横締めPC鋼材 | φ24mm |
| 防水層 | なし |
| 交通量 | 10,000台/日 |
| 凍結防止剤 | 冬季に散布 |
💬 現役受験生として
問題文を読んだ瞬間にチェックすべき項目が3つあります。こちらの3点です。
- 「骨材がアルカリシリカ反応性あり」→ASRを疑う
- 「凍結防止剤の散布あり」→塩害を疑う
- 「防水層なし」→雨水・塩分の浸透経路が確保されている
PC橋なので「シース内への水分・塩分浸透」という視点も加わります。
各部の変状と写真から読み取り
A部(主桁・シース内)の変状
- 写真1:主桁側面にひび割れ・錆汁・剥落
- シース内にPC鋼材の腐食
- 凍結防止剤による塩化物イオンが供給されている
- エフロレッセンス(白色析出物)が確認される
B部(床版下面・横桁周辺)の変状
- 写真2:床版横断積めコンクリートの剥落・間詰めコンクリートの露出
- 写真3:シース内の断面欠損(PCシース内に腐食が発生していない)
- ASRによる亀甲状ひび割れ
写真の読み取りポイント
| 写真 | 確認できること | 判断すべきこと |
|---|---|---|
| 写真1(A部外観) | 錆汁・剥落・ひび割れ | 塩害による鉄筋腐食・凍害 |
| 写真2(B部外観) | 間詰めコンクリート剥落 | ASRによる膨張・剥落 |
| 写真3(シース内面) | シース内の断面欠損なし | B部のPC鋼材腐食なし |
🎯 試験のポイント
A部とB部で状況が全く異なります。
A部はシース内腐食が進行中、B部はASRが主因でシース内腐食はまだ発生していないという対比が問1〜問3の回答に直結します。
ここまでの問題文と写真や表から、以下のことが読み取れました。
- 反応性骨材→アルカリシリカ反応あり
- アルカリ供給→凍結防止剤の散布あり
- 水の供給→防水層なし
ASRの原因である「骨材・アルカリ・水」の3要素がそろっています。
問1の解き方 A部・B部の変状原因を推定する
メモ作りのステップ
STEP1:A部に関する事実を書き出す
- 中国地方山間部・凍結防止剤散布→寒冷地・塩分供給あり
- 防水層なし→雨水・塩分がコンクリート表面から直接浸透
- 53年経過→長期の劣化蓄積
- シース位置のかぶり不足の可能性(1961年施工指針→現在より基準が低い)
- 写真1:錆汁・剥落→鉄筋腐食が進行中
- シース内にPC鋼材の腐食→グラウト充填不良の可能性
STEP2:B部に関する事実を書き出す
- 骨材がアルカリシリカ反応性あり→ASRの発生条件あり
- 床版下面のひび割れ・間詰めコンクリート剥落
- 写真2:間詰めコンクリートの剥落と露出
- 写真3:シース内断面欠損なし→PC鋼材腐食はまだ発生していない
💬 現役受験生として
A部で一番重要な視点が「グラウト充填不良」です。
PC橋のシース内腐食は、グラウトが不完全にしか充填されていない部分に水分・塩分が侵入することで発生します。
また、山間部のため寒冷地となり、水分の侵入が原因の凍害の発生も考えれます。
1964年竣工の橋梁なので当時の施工精度の問題も背景にあります。この視点が書けるかどうかで答案の質が変わります。
また記述式を解くときに、いきなり書き出すのではなく、キーワードをピックアップし「初めにメモを作ること」の重要性について、別の記事で解説しています👇
▶︎【記述式攻略②】コンクリート診断士の記述式は最初の30分が重要!時間配分・メモ作りの手順・キーワードの使い方を現役受験生が実践解説
問1の回答例
「A部の変状原因として、凍結融解作用による凍害および凍結防止剤の散布による塩害の複合劣化を推定する。本橋梁は中国地方山間部に位置し冬季に凍結防止剤が散布されている。防水層が設置されていないため、融雪水とともに塩化物イオンがコンクリート表面から直接浸透し、シース位置まで到達したと考えられる。シース内グラウトの充填が不完全な箇所では水分・塩化物イオンが直接PC鋼材に接触し、腐食が進行したと推定される。錆汁・剥落はマクロセル腐食を含む鉄筋腐食の進行を示している。
B部の変状原因として、アルカリシリカ反応(ASR)を主因と推定する。使用骨材(山砂利・山砂)がアルカリシリカ反応性を有しており、コンクリート中のアルカリ成分と反応してアルカリシリカゲルを生成・吸水膨張した結果、内部から膨張圧が発生し床版下面に亀甲状ひび割れが生じたと推定される。写真3よりシース内のPC鋼材腐食はまだ発生していないが、ひび割れの進行により今後腐食が生じる可能性がある。」
🎯 使ったキーワード
凍害・凍結防止剤・塩化物イオン・グラウト充填不良・シース内腐食・マクロセル腐食・アルカリシリカ反応・アルカリシリカゲル・吸水膨張・亀甲状ひび割れ
問2の解き方 必要な調査項目を4つ述べる

問2のポイント
2023年の問2は「調査項目を4つ述べる」という形式です。
A部とB部それぞれの劣化に対して、具体的な調査方法と目的をセットで書くことが重要です。
4つとなると、そんなに調査方法思いつかないと焦っていますかもしれません。しかし、落ち着いてキーワードを拾っていきましょう。
調査項目の選び方のフレーム
「何を・どこで・どの方法で・何と比較するために調査するか」を一文で書ける調査を4つ選びます。
問2の回答例
①シース内グラウト充填状況の調査
衝撃弾性波法または打音検査により、シース内のグラウト充填状況および空洞の有無を確認する。充填不良箇所はPC鋼材腐食の潜在リスクとなるため優先的に確認する。
→シース内グラウト充填調査と言えば、「衝撃弾性波法」と答えられるように!
②シース内塩化物イオン濃度の調査
A部のシース近傍からコアを採取し、深さ方向の塩化物イオン濃度分布を測定する。腐食発生限界値(1.2kg/m³)との比較により、PC鋼材腐食のリスクを評価する。
③PC鋼材の腐食状況および健全性の調査
さらに点検ハンマーによる外観調査に加え、コンクリートをはつり取りシース内を直接確認する。PC鋼材の破断・断面欠損の有無を確認し、プレストレス力の残存状態を評価する。
④残存膨張量試験(JCI-DD2法)によるASR進行状況の調査
B部からコアを採取し残存膨張量を測定する。0.1%未満であれば収束、0.1%以上であれば膨張継続と判定し、今後の対策方針に反映する。
→残存膨張量の基準値である「0.1%」は暗記しておいて、必ず記述に盛り込むこと!
🎯 使ったキーワード
衝撃弾性波法・グラウト充填状況・塩化物イオン濃度・腐食発生限界値・プレストレス力・残存膨張量(JCI-DD2法)・点検ハンマー
💬 現役受験生として
問2でPC橋特有の調査として「衝撃弾性波法によるシース内空洞確認」を入れられるかどうかが他の受験生との差になります。
一般的なRC橋の調査項目(塩化物イオン濃度・自然電位法)に加えて、PC橋特有の視点を一つ入れると答案の専門性が一気に上がります。
問3の解き方 今後50年供用するための対策を3つ提案する

対策のフレームワーク
問3は「今後50年供用するための対策を3つ、重要な順に提案する」という形式です。問1・問2の内容と一貫した論理が必要です。
優先順位の考え方
PC橋において最も危険なのは「PC鋼材の破断・プレストレス力の喪失」です。これは突然の崩落につながる致命的な損傷です。まずこれを防ぐ対策を最優先に置きます。
A部の対策(最優先)
考え方
シース内腐食が進行しているA部は、プレストレス力の喪失リスクがある最優先対策箇所です。
対策の流れ
① 鉄筋腐食が生じている箇所のコンクリートをはつり取り→防錆処理→断面修復
② シース内のグラウト再充填(空洞部への追加注入)により、PC鋼材を保護
③ 防水層の設置により、雨水・凍結防止剤の浸透を根本的に遮断
B部の対策
考え方
ASRが進行中の場合は水分遮断が最優先。シース内腐食がまだ発生していない段階なので、予防的対策が中心になります。
対策の流れ
① 表面被覆工法により水分・塩化物イオンの浸入を遮断しASRの進行を抑制
② 既存のひび割れへの弾性エポキシ樹脂注入による封止
③ 定期的な残存膨張量・シース内充填状況のモニタリング
問3の回答例
第1位(最重要):A部のシース内グラウト再充填と防水設備の設置。本橋梁においてPC鋼材の腐食・破断によるプレストレス力の喪失は橋梁の安全性を根本から損なうため最優先とする。腐食したPC鋼材周辺のコンクリートをはつり取り、鉄筋の防錆処理後に断面修復を行う。さらにシース内の空洞部にグラウトを再充填してPC鋼材を保護する。防水層を設置して塩化物イオンの供給を根本的に遮断することが今後50年の供用を可能にする最重要対策となる。
第2位:B部の表面被覆工法とひび割れ注入によるASR進行抑制。ASRの進行抑制には水分遮断が最も効果的である。表面被覆工法により水分の浸入を防ぎ、既存ひび割れへの弾性エポキシ樹脂注入で封止を行う。現時点でシース内腐食は発生していないが、ひび割れが拡大すると塩化物イオンの浸透経路となるため予防的対策として実施する。
第3位:定期的なモニタリングと維持管理体制の確立。A部のPC鋼材健全性(自然電位法・衝撃弾性波法)およびB部の残存膨張量を定期的に測定し、劣化の進行を継続監視する。状態変化に応じて補修方針を見直し、今後50年の供用に対応した維持管理計画を策定する。
🎯 使ったキーワード
グラウト再充填・プレストレス力・断面修復・防水層・表面被覆工法・弾性エポキシ樹脂注入・残存膨張量・自然電位法・衝撃弾性波法・維持管理計画
2023年問題から学ぶ2026年試験への対策

2023年の問題を解いてみて、来年に向けて押さえておくべきポイントが3つ見えました。
① PCポストテンション橋特有の視点を持つ
- 「シース内のグラウト充填状況」
- 「PC鋼材の腐食・プレストレス力喪失」
この視点はRC橋の問題には出てきません。PC橋が舞台のとき、この2つを必ずメモに書き出す習慣をつけておきましょう。
② 「防水層なし」という条件は塩害の最大の加速因子
防水層がないことで雨水・凍結防止剤が直接コンクリートに浸透します。
問題文に「防水層なし」と書いてあったら、それが劣化の主因の一つとして答案に必ず盛り込んでください。
③ A部とB部で優先順位をつけた対策が書けるかどうか
2023年も2025年と同様にA部とB部で劣化原因が異なります。
「どちらが緊急度が高いか」という判断を答案に明示できると高得点につながります。PC橋の場合は「プレストレス力の喪失リスク」がある部位が常に最優先です。
💬 現役受験生として
この問題を最初に見たとき「PCポストテンション橋か…シース内腐食ってどう書けばいいんだ」と少し焦りました。
でも基本の考え方は同じで「なぜシース内に水分が入ったのか」「その結果何が起きたのか」という原因→メカニズム→対策の流れで組み立てれば対応できます。
特殊な構造物でも基本の型は変わらないということを、この問題で実感しました。
まとめ:2023年問題の解き方を一枚で整理
| 設問 | A部(主桁・シース内) | B部(床版下面・横桁) |
|---|---|---|
| 問1(原因) | 凍害・塩害(シース内腐食) | ASR |
| 問2(調査) | グラウト充填確認・塩化物イオン濃度・PC鋼材健全性 | 残存膨張量・シース内確認 |
| 問3(対策) | グラウト再充填・断面修復・防水層設置 | 表面被覆・ひび割れ注入・モニタリング |
| 重要キーワード | グラウト充填不良・マクロセル腐食・プレストレス力 | 残存膨張量0.1%・ASR収束判断 |
2023年の問題はPC橋という特殊な構造物が舞台でしたが、基本の考え方は一般的なRC橋と同じです。
- 「なぜシース内に水分が入ったのか」
- 「プレストレス力を守るためにどう対策するか」
この2点を軸に答案を組み立てれば対応できます。
PC橋が出たときに「難しい」と感じて諦めるか、「基本の型で対応できる」と考えて書き切るか。その差が合否を分けます。
試験まで残り少ない時間、2025年・2023年の問題を自分の言葉で書き直す練習をしてみてください。
書いた分だけ、本番で手が動きます。7月26日、一緒に合格しましょう。
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