
補修補強会社で施工管理をしているエナガパパです。
コンクリート診断士の勉強を始めて、最初にぶつかる壁のひとつが「ひび割れの原因特定」じゃないでしょうか。
「沈下なのか、乾燥収縮なのか、温度応力なのか……」
写真一枚を見てパターンを判定しろと言われても、最初は全然わからないですよね。
正直、私も過去問を解いていて何度も間違えました。
ただ、あるルールを一つ頭に入れてから、ひび割れ問題への苦手意識がなくなりました。
今回はそのルールと、特に試験に出て間違いやすい沈下パターンを一緒に整理していきます。
【結論】ひび割れは「引張力と直交する向き」に入る

難しく考えなくて大丈夫です。ひび割れ問題は全部このルール一つで解けます。
「ひび割れは、引張力の方向と直角(直交)に入る」
コンクリートは圧縮力には強い材料ですが、引張力にはめっぽう弱いです。
引張力が働いた方向に対して、垂直にブチッと引きちぎられるようにひび割れが入ります。これだけです。
💬 現場で実際に感じたこと
現場でひび割れを見るとき、「どっちに引っ張られた結果こうなったのか」を自然と考えるようになりました。
試験で問われていることは、現場で毎日やっている判断と同じです。
まず梁で理解する/鉛直荷重がかかったときの挙動
沈下問題を見る前に、一番シンプルな「梁に鉛直荷重がかかったとき」で法則を確認しましょう。

梁に下向き荷重→下端が引っ張られる→下端に水平なひび割れが入る
- 梁の上から荷重がかかると、梁は下向きに曲がろうとします(たわむ)。
- 梁の上側は圧縮される方向に力が働きます。梁の下側は引っ張られる方向に力が働きます。
- 結果として、引張力が働いている梁の下側に、引張力と直交する向き(=鉛直方向)のひび割れが発生
これが「引張力に直交してひび割れが入る」法則の一番シンプルな例です。
梁の中央部では荷重が大きいので下端に鉛直なひび割れ、支点付近ではせん断力が大きいので斜めのひび割れが入ります。
この使い分けも試験で問われるポイントです。
📝 重要メモ
- 「梁の下端に鉛直ひび割れ=曲げによる引張」
- 「梁の端部に斜めひび割れ=せん断による引張」
この2パターンはセットで覚えましょう。
沈下に応用する——せん断力→斜め引張→斜めひび割れ
梁の法則が理解できたら、沈下問題も基本的に同じ考え方で解けます。
建物の基礎や支点が沈下すると、構造物にはせん断力が働きます。せん断力が働くと、斜め45度方向に引張力(主引張応力)が発生します。
この斜め45度方向に引張力が発生するのを私は、「ひし形の法則」と呼んでいます。

ひし形で考えると、頭の中がスッキリとして理解が深まります。
せん断力→斜め方向の主引張応力→それに直交する斜めひび割れ
つまり沈下によるひび割れは「斜めに入る」のが特徴です。
鉄筋に沿って入る塩害や中性化のひび割れとは、見た目で区別できます。
第1章のひび割れ等の変状について、身近なものに例えて分かりやすく解説しています。本文に入る前に概要を確認すると、理解が深まりますよ!👇
▶︎【第1章】変状の種類と原因(ジャンカ・ひび割れ等を現場翻訳!)
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過去問で実戦①!沈下ひび割れの考え方をマスターする
では実際の過去問で確認しましょう。
問題:RC造建物の右側2本の杭が沈下した場合、壁面のひび割れは正しいか?

解き方の手順はこの3ステップだけです。

STEP1:1つ窓を選択して考える
右側の杭が沈下している。赤枠のように右側が沈下して左側がフリーな窓を選択する。
右側が下がり、反対の左側との間でズレが生じます。
STEP2:「ひし形の法則」で考える
右側が下がることで、広がるように上部に水平力が作用する。対照的に左側にも鉛直力と水平力が作用する。
【重要】この時に四角形がひし形になろうとします。
右上角と左下角が押されて圧縮されます。左上角と右下角が伸びて引張られて、斜め方向(右下から左上)に引張主応力が発生します。
STEP3:引張力と直交する向きにひび割れ
引張主応力の方向と直交する向きに線を引くと、「沈下した側(右)に向かって斜め上がり」のひび割れになります。
なので、問題文の壁面のひび割れは正しいことになります。
💬 身近な構造物で見てほしい
不同沈下した構造物を現場で見たら、この斜めひび割れが実際に入っていると思います。
教科書で学んだパターンが目の前にある瞬間は「なるほど、本当にこうなるんだ」という感覚があって、試験の知識が体感として定着しやすいです。
過去問で実戦②!沈下ひび割れ問題を解けるように
では実際の過去問でもう一問確認しましょう。
問題:RC造建物の中央3本の杭が沈下した場合、壁面のひび割れはどうなるか?

解き方は問題①と同じ考え方で、基本的には3ステップだけです。

STEP1:1つ窓を選択して考える
赤枠のように左側が沈下して右側がフリーな窓を選択する。
左側が下がり、反対の右側との間でズレが生じます。
(※左赤枠の3つの窓から選んでもOK! 今回は右側窓を選択しています)
STEP2:「ひし形の法則」で考える
左側が下がることで、広がるように上部に水平力が作用する。対照的に右側にも鉛直力と水平力が作用する。
【重要】この時に四角形がひし形になろうとします。
左上角と右下角が押されて圧縮されます。右上角と左下角が伸びて引張られて、斜め方向(左下から右上)に引張主応力が発生します。
STEP3:引張力と直交する向きにひび割れ
引張主応力の方向と直交する向きに線を引くと、「沈下した側(左)に向かって斜め上がり」のひび割れになります。
そして、左赤枠には対照的な斜めひび割れが発生します。
正解はこちらです👇

中央2列の窓は、どちらも同じ鉛直方向の沈下が発生するのでひび割れなし。
あくまで、沈下が片側だけに作用する赤枠窓にひび割れが発生するのです!
試験に出る沈下パターンを整理する
沈下問題には主に3つのパターンが出ます。
① 支保工(サポート)の沈下

中央が沈下した場合は梁の中央下部にひび割れが入ります。
中央が沈むことで梁の下側が引っ張られるためです。梁のひび割れの挙動で説明した通りですね。
片側が移動した場合は部材の中央付近に鉛直なひび割れが入ることがあります。
② 不同沈下(基礎の片側が沈む)

今回の過去問のパターンです。沈下した側に向かう斜めひび割れが特徴です。
建物全体がゆがむため、開口部(窓・ドア)の角から斜めに入るひび割れも典型的な見た目です。
③ 他の原因との見分け方
| 原因 | ひび割れの特徴 |
|---|---|
| 沈下・せん断 | 斜め方向・開口部の角から |
| 塩害・中性化 | 鉄筋に沿って入る(これが例外的なひび割れ) |
| ASR(アルカリシリカ反応) | 初期:亀甲状、進行:鉄筋沿 |
| 乾燥収縮 | 亀甲状・表面に細かく入る |
| 温度応力 | 部材の長手方向に直交 (長手方向が伸縮するから) |
🎯 診断士の視点(試験のポイント)
- 「斜めに入っているか」
- 「鉄筋通りに入っているか」
この2点が原因を絞り込む最初のチェックポイントです。
発生時期も大切で、
沈下は施工中〜完成直後に多く、塩害・中性化は供用後10〜30年以上で顕在化します。
特に塩害や中性化によるひび割れは、記述式問題で良く出ます!
「供用年数が長ければ、疑うべし」
まとめ 迷ったら「どっちに引っ張られているか」を図に書く
ひび割れ問題で迷ったときは、以下の手順で考えてみてください。
- 荷重や沈下の向きを確認する
- 発生するせん断力・引張力の方向に矢印を書く
- その矢印にT字になるように線を引く
これだけで正解のひび割れパターンが見えてきます。
梁の曲げひび割れも、沈下のせん断ひび割れも、温度応力のひび割れも、全部このルール一つで解けます。
最初は手を動かしてとにかく図を書く練習をおすすめします。私も泥臭くやってます。
試験本番でも「引張力はどっち向きか」を考える癖がつけば、ひび割れ問題は確実な得点源になります。
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